Let It Go !

量産コンポジットの世界。とタイトルさせていただいているこのブログですが、それはどういうものでしょうか?BMWがi3、i8を発表し、発売しています。日本の自動車メーカーはそれを追従するでしょうか?

BMWがとったRTM成形は日本の自動車メーカーやその部品供給を行っている部品メーカーにとって、最良の自動車用コンポジット成形技法でしょうか?

BMWの説明を聞けば「最良の量産コンポジット生産体制」だと思います。BMWは、レースベース車Mシリーズのトランクやルーフ、ボンネットの生産を量産車で行ってきました。ユーザーが求める製品のクオリティを維持し、材料コストや生産の機械化などを試してきたのだと思います。そのBMWがSGLを買収し傘下に収めて、カーボンの炭化コストまでもツメて、創り出したシステムですから、他社には絶対にマネできない素晴らしいシステムです。

BMWが、カーボンコンポジットを採用してきた背景には、レース用部品での高強度、軽量化における信頼性の積み上げとコストカットができるサプライチェーンの構築できる目途がついたからでしょう。(現在のところは、まだキビシイというウワサですが…)

日本のものづくりと欧米のそれは、明らかにその流儀というかマナーが違います。日本では高度経済成長を支えた大量生産技術には、FRP(繊維強化プラスチック)は、含まれていません。鉄鋼で重工業を支え、石油化学製品で大量生産してきました。軽いモノが欲しい時はアルミ合金等の軽金属で押し出して、型に鋳込んで。プラスチックは溶かして、射出して、押し出して、真空成形して…。

FRPFRPだけの特殊な用途の大型少量生産品(クーリングタワーやボート、ヨット、競技場のベンチやお風呂、洗面台等)に使われ、自動車では特装車やキャンピングカー、救急車などに使われてきました。FRPは廃棄、リサイクルなどの技術が確立していなかったこともあり、自動車部品の樹脂化が進んで、プラスチックパーツで軽量化や安全性、デザイン性の向上がはかられても、なかなか長繊維ファイバーのFRPは日本では敬遠されてきました。

その点、アメリカでは、キットカーが合法的に走ることができ、過去に発売されたスポーツカーのボディには、FRP、SMCが多用されてきたので、日本よりは量産コンポジットの敷居は低いと思われます。

ユーノス・ロードスターのボディの材質と、シボレー・コルベットスティングレー(代表的なアメリカ製スポーツカー)ロータス・エラン(代表的な英国製スポーツカー)の材質を比べると、過去における自動車部品のマナーの違いが解ると思います。

(つづきます)

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コンポジット・スプリング そのメリット

前回のコンポジット・スプリングの話のつづきです。

アウディが採用したスプリングについては現物を見て、開発者にその詳細を聞かないことにはよくわからないことがありますが、弊社が、過去に製作したカーボン・コンポジットスプリングについては、作ってみて、いくつかわかったことがあります。詳細についてイロイロ書くと、開発にご協力いただいた企業様もあるので、何かと問題もありますが、基礎知識としてお伝えできることを書いてみましょう。

コンポジット・スプリングのメリットとして挙げられるのは、まずは重量です。金属(鋼やチタン等)スプリングと比べるともともとの材質の比重が違いますから、同じサイズで作ると明らかに軽量になります。もちろん弾性や剛性を考慮して、同等の性能を出そうとすると、線径は太くなります。その体積が増えても、重量的にメリットあります。

次に、腐りません。コンポジット・スプリングはVfがどうであろうと、基本的に樹脂に被覆されているので腐りませんし、アウディのようにその樹脂を原料着色すれば、塗装仕上げも不要です。

コンポジット(複合材料)は、線膨張係数の異なる材質を組合せているわけですから、金属スプリングのように単一材料ではないので、それを共鳴することはなく、微振動を吸収します。

上記の理由もあって、コンポジット・スプリングは金属よりも疲労が少なく、ロングライフです。自動車用のサスペンションでは鋼のスプリングでも、長期間使用して疲労破壊が起こることはほとんど無いとは思いますが、ヘタってきたり、縮んで、がたつきが出てきます。コンポジット・スプリングは疲労によるヘタリがなく、いつまでもしなやかです。

こういった、コンポジット・スプリング。量産するなら、どんな用途があるでしょうか?

ベッドやスプリング入りマットレスなどいかがですか?ロングライフということを考えれば、建築関係の耐震/免震にも役立ちそうです。

自動車業界以外にも、量産コンポジットは用途がありますよ!試してみませんか?

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JCM日本複合材マーケットでは、ご希望のサイズ、スペックでの試作、試験用の少量生産から対応させていただきます。お問合せ下さい。

http://www.fukugouzai.com/

 

コンポジット・スプリング 量産車に採用決定!

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アウディはGFRP(ガラス繊維強化ポリマー)製の新しい、軽量なサスペンション・スプリングを今年中に同社のアッパー・ミドルサイズの車種に採用すると発表しました。

そのGFRPスプリングですが、アウディはイタリアのサプライヤーの協力を得て開発をしてきました。スチール製のスプリングとは見た目にも異なります。ライトグリーン色です。

ファイバーストランドは、スチール製のコイルスプリングよりも太く、巻の外形も少し大きく、コイルの数は少し少ないです。しかしながら、40%軽量になりました。

アッパー・ミドルサイズの乗用車用のスチールのバネは、通常約2.7kg(6.0lb)の重さであるのに対して、同じ特性によるGFRPバネはちょうど1.6kg(3.5lb)の重さです。それにより4つのGFRPスプリングは4.4kg(9.7lb)車両重量の低減を実現します。その半分はばね下質量に関係しますので効果的です。

アウディの技術開発部門の取締役であるハッケンバーグ博士は「GFRPスプリングは、重要な部分での重量低減に貢献します。それにより、正確なドライビングと振動低減による快適性を提供できるようになりました」と言います。

スプリングの中心部分は、エポキシ樹脂を含浸させ、一緒に捻じられたたロングファイバーフィラメントの・グラスファイバーから成ります。 この構造は、フィラメントは±45°の角度で交差し、これらの引張と圧縮の重複は、最適に、構成要素に作用しているストレスを吸収するために、お互いを相互に支持します。

各スプリングは、100°C/212°F以上で、オーブンで硬化します。(専用のエポキシ樹脂を使っているようです。注:MBJP)

アウディによってあげられる、これ以外のGFRPスプリングの利点としては、 

メンテナンス性の向上、耐腐食性の向上、耐薬品性の向上、製造中におけるエネルギー消費量の削減があげられます。

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出展:Compoistes World 誌デジタル板

http://www.compositesworld.com/news/audi-to-introduce-gfrp-suspension-springs-before-years-end

 

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JCM日本複合材マーケットでは、海外の研究機関、ブレイディング織物工場、エポキシ樹脂メーカー、RTM成形工場との連携により、カーボン・コンポジットスプリングの量産供給が可能です。ご希望のサイズ、スペックでの試作、試験用の少量生産から対応させていただきます。お問合せ下さい。

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RockTool LIT成形システム

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ロックツール LITモールディング・システムは金属製メス型とシリコン製のオス型の構成です。樹脂はパウダーコートかフィルム成形のプリプレグされた材料を使います。圧力は30 bar/420 psi以上を圧縮空気のみで供給します。サイクルタイムのレンジは105秒から310秒で、ロックツールの電磁誘導急速加熱システムの恩恵を受け、実現しています。

6月11日~12日にアメリカ合衆国ミシガン州ノビで開催されたCompositesWorld's誌の熱可塑性プラスチック・コンポジット・カンファレンスにおいて、ロックツール社のマシュー・ブーランジェ氏が「大量生産用途に向く」新しいロックツール社のシステムとして紹介しました。

ライト・インダクション・ツーリング(LIT)はスチール製のメス型と、シリコン製のオス型で構成されます。(MBJP注:ダイヤフラム成形とも呼ばれる方法ですね)

カーボン、グラスファイバー、天然繊維またはアラミド繊維のユニ・ディレクション(単一方向性)または織物繊維強化材を、ドライ・ファブリック状態でも、プリプレグ状態でも金型に置きます。その時に繊維強化材料がドライ・ファブリックの場合はパウダー状、またはフィルム状の樹脂を加えます。樹脂マトリックスは、熱可塑性でも、熱硬化性でも、どちらでもOKです。

シリコン製のオス型は型を閉じるときにベースのメス型に入り込むように挟み込みます。

空気圧30 bar/420 psi以上を、ロックツール誘電加熱システムにより 280°C/536°F以上になる45秒から90秒間(材料や製品の形態により時間は異なります)供給します。水による急速冷却システムにより型と製品を60秒から120秒かけて冷やします。成形の合計時間は105秒から310秒です。

 

ブーランジェ氏によると、このシステムはプレ・ヒーティング(予備加熱)は必要なく、樹脂リッチな表面であっても、後追い樹脂射出成形を必要とせず、製品の厚みを考慮に入れて、ほど良い温度調節ができる機能を有しているそうです。

ブーランジェ氏は、このカンファレンスで、LITシステムで製造されたカーボン、グラス、天然繊維の強化材にPET樹脂とPP樹脂を含浸をさせて作ったの3つのスーツケースを紹介しました。製品の厚みは1 mm/0.04 inch.です。

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出展:Compoistes World 誌デジタル板

http://www.compositesworld.com/blog/post/roctool-announces-new-high-volume-molding-process

 

JCM日本複合材マーケットでは、RockTool LITシステムで使用する、パウダーコートプリプレグ他、各種熱可塑プリプレグを国内外の材料メーカーから、お届けしています。

http://www.fukugouzai.com/

 

 

 

カーボンは何に使う?

「どうやら自動車メーカーがカーボンに注目しているので、わが社でもカーボンを扱ってみよう」「熱硬化性樹脂は扱いが難しそうだし、熱可塑性ならなんとなく使えるかも」と、カーボン素材に注目されている方は多いのではないでしょうか?

JCM日本複合材マーケット・サイト(www.fukugouzai.com)は、複合材料の販売のサイトですが、材料販売の件数よりも、カーボン素材に関するご質問の方が多いです。CFRP成形工場様に「よりリーズナブルに国際価格で材料をワンクリックで提供します」のはずが、「プリプレグを見たことないから触らせてほしい」という方が結構、来られます。

そういった皆様には、私は必ず質問することがあります。

「御社のコア技術は何ですか?(=どんなものづくりがお得意ですか)」

「今、どんなものを作っておられますか?今後、どういうものを作りたいですか?」

です。

 

そのうえで、最適のコンポジット材料をご紹介するようにしています。

 以下のリンクは、日本を代表する炭素繊維メーカーが紹介されているカーボンの用途です。

 

東レ 様 トレカの活躍

http://www.torayca.com/activity/index.html

テイジン 東邦テナックス 様 製品例

http://www.tohotenax.com/tenax/jp/products/products.php

三菱レイヨン 様 パイロフィルの用途

http://www.mrc.co.jp/pyrofil/application/index.html

 

航空宇宙、釣竿、ゴルフ、テニスなどのスポーツ用品、自動車、船舶、自転車等の乗り物、土木建築、風力発電、高圧容器等がその用途だそうです。その内容は三社ともほぼ同じで、順番まで同じところもあります。繊維メーカー側から考えると、このあたりが炭素繊維をたくさん使ってくれる可能性のあるマーケットなのでしょう。視点は「いかに、たくさんの炭素繊維を使ってくれるか」です。

 

ところで、上記の用途は御社のものづくりに、当てはまりますか?

当てはまる方は、きっとすでによいお取引が繊維メーカー各社とできていると思います。私どもがお手伝いできる余地はあまりないのではないかと思います。

当てはまらない方こそが、「新しい」カーボンを創り出す可能性のある方だと思います。軽くて、強くて、腐らなくて、外観がキレイなものを〇〇〇に使いたい…。そこに次世代のコンポジットの用途があると思います。

 

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新しい時代のクルマづくり

BMW i3コンセプトのスケルトンボディーを見て、まず思ったことは、「作れるようにして作ってあるんだ」ということ。決して、今までに経験していない不確実な製造技術ではなく、BMWが今までに蓄積してきたコンポジットパネル量産技術を用いているということに感心しました。今までにスポーツタイプのMシリーズ用のルーフや、ボンネット、トランクなどを成形してきたRTM成型品を接着剤でボンディングする方法でした。RTM成形したパネルを、あたかも金属製パネルの代替として構成している形です。「ライフモジュール」と名付けらたCFRPのケーシングも、レーシングカーのようなワンピース・モノコックボディーではなく、パネルを組み合わせてそれを形成しています。
BMWCFRPパネルの成形はファブリックをプリフォームして、エポキシ樹脂を打ち込むRTM成形です。Mシリーズのルーフなどに採用され、すでに数万台以上の製造実績があります。http://www.fukugouzai.com/bmw-i3.html

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