Let It Go ! つづき

前回は長文になってしまい、肝心のLet It Goにまで、話ができずでした。欧米と日本の産業構造が違うので、日本で欧米の量産システムをそのまま持ち込むのは??ではないかというわけです。高度経済成長を経験していない新興国に工場を建てるならまだしも、すでに大量生産~多品種少量を経験している製造業に従事している各社が、単純に材料と生産システム(ロボットを含む)を導入して、欧米人のマネをするなど、ちょっと考えると有りえない話だと思います。

日本では、というよりも、日本国内でも各社各様でその生産品も生産システムも異なります。コンポジットは言うまでもなく複合材料のことで、カーボン等の工業用繊維と樹脂素材の組合せです。(※広義には、樹脂素材とも限らず金属材料や天然素材も含みます)量産化の方法は、各社各様で良いのです。

「130℃硬化エポキシ+カーボン織物の積層でないとカーボンコンポジットではない」とお考えの方々も居られます。それは、それで正しいと思います。オートクレーブ成形しないとCFRP製品ではないと考える人が量産する方法は、同じスペックのアルミの金型を100面以上用意し、プリカットしたプリプレグを数十人の成形スタッフか、レイアップ・ロボットハンドを使って、金型にジャンジャン貼りこみ、同じスペックのオートクレーブを数基並べて、時間差で次々に稼働させる…。数年前に台湾のラップトップ用CFRPパネルの製造工場はこんな感じでした。

プレス成形が得意な会社は、その会社の設備に会った材料を選んで(無ければテイラード材料を作らせて)加熱プレスすれば良いです。現在の日本では、加熱+冷却プレス成形で、コンポジットパーツが作れるように、新しい材料が次々に発表されています。

射出成形が得意な会社は、熱可塑性プリプレグをその会社の設備にあったスペックで調達し、インサート成形や、より薄物のプリプレグを手配してフィルム・インサート成形の要領で短繊維や繊維長の長いCF入りのペレットを射出成形するのが良いです。

真空成型が得意な会社は、熱可塑性プリプレグを樹脂リッチで手配し、樹脂シートの加工の要領で真空成型できます。

樹脂ブロックや金属ブロックからの削り出し加工がお得意な会社は、カーボンのブロックからの削り出しをお勧めします。最近は良い刃物も発売されているので、刃物の最新情報を集めて、御社の機械の最適なものを選んでください。決して刃物は金属用のまま加工しないでください。すぐにヘタリますし、イヤになると思います。

ウレタンバンパーなど二液混合の成形機器をお持ちの会社は、RTM成形が近くにありますが、どのようにカーボン材料をどのタイミングで組み込むかをご検討下さい。

まずは、既存の材料を手に取って、御社でどう料理するか、よーく考えてみてください。

売っている材料なら買えば良いですし、売ってなければ、作れば良いのです。材料ごと作ってしまえば、他社の追従はありません。

量産コンポジットは、まだまだ開発途上です。だから、Let It Goなんですよ。