炭素繊維の価格動向

日本経済新聞によると

東レ炭素繊維の販売価格を新規契約分から2割程度値上げする。主原料価格の高騰とコンテナ不足などに伴う物流費の上昇でコスト負担が増している。新型コロナウイルス禍で航空機向けの需要は低迷するが、脱炭素社会への対応で大型化や新設が相次ぐ風力発電機向けは伸びている。2017年以来およそ4年ぶりの一斉値上げで採算の改善を急ぐ。炭素繊維の販売価格を新規契約分から2割程度値上げする。主原料価格の高騰とコンテナ不足などに伴う物流費の上昇でコスト負担が増している。新型コロナウイルス禍で航空機向けの需要は低迷するが、脱炭素社会への対応で大型化や新設が相次ぐ風力発電機向けは伸びている。2017年以来およそ4年ぶりの一斉値上げで採算の改善を急ぐ。」

だそうです。

現在、世界的に風力発電の需要が高まり、日本のメーカーだけでなく、海外メーカーでも炭素繊維の需要が供給を超えているそうで「年内の生産分は、先月までに売り切れました。今後の注文分の納品は2022年に入ってからになります」と聞きました。

 

でも、慌ててはいけない。これまで、地震があったり、飛行機の需要が高まったりと、何度も「炭素繊維の値上げ」の話は聞いてきました。「価格の高騰」は、何度も経験してきました。何年かのサイクルで値上げ話があります。いつもそう。市場経済なので、いつか下がります。上がり続けることはありません。

量産プログラムに即、まとまった量が必要な場合は難しいですが、その前段階の開発トライアル用なら、いつでも何とでもできます。気になっている人はお声掛けください。

Composites United に正式に加盟しました。

2021年1月28日。JCM日本複合材マーケット、株式会社日本複合材は、このたびドイツ・アウグスブルグに本拠地のあるCU(Composites United)から、正式にメンバーシップを与えられたことをご報告いたします。

Composites United e. V. (CUは、高性能繊維複合材料とハイブリッド材料を使用したマルチマテリアル軽量構造の国際ネットワークです。 CUには、研究機関や機関会員など、約400社・団体の会員がいます。

 

 

composites-united.com

 

2021年が始まりました。

新年明けましておめでとうございます。

コロナ禍のなか、リモート会議だとか、オンライン展示会だとかで「便利な世の中になったなぁ」と思ったり「やっぱり、現場、現物でないとよくわからない」とぼやいてみたり。

緊急事態宣言が発動されれば、これまで以上に移動の制限とか公的にされてしまうので、「売り込みに…」とか「現物を見てもらって」というタイプの営業はほぼNGなので、現在はホームページのリニューアルに取り組んでいます。

幸い、ネット販売できる商材は山ほどあるので、こなすべき作業は大量にありますが、気が付いたことがあって、結構カルチャーショックを受けています。

それは、ネット販売、EコマースのSHOPエンジンです。

楽天市場」が幅を利かせはじめた20世紀のころから、Eコマースで商売をしてきましたが、いつまでも古いエンジンで苦労してサイトを作ってるのがバカらしくなるほど、進化していますね。少し前なら「Amazonに出品すれば…」とか「モノタロウに載せれば…」みたいなところはあったのですが、そのIT市場を食ってやろうと、別のサービスが次々出てきますね。「大手Eコマースサイトなら埋もれてしまいますよ」と切り崩しています。メルカリ感覚で、一点ものでも「売れたら終わり」「さっさと値引き」が簡単にできるようになっていますね。

これまで、JCM日本複合材マーケットは、日本国内の材料流通の仕組みから、サイトでの価格表示をできるだけ避けて、

お引合いをいた方にのみ、ベスト・プライスをお伝えしたり、サイトに載っていない商材のご紹介をしたりしてきました。それは、これまでのエンジンでは在庫管理や価格管理がクイックにできなかったからですが、これからは「カーボンの端切れ」とか「プリプレグのラスト数メートル」とかを出していけそうです。

今年の前半は出張もなく、オフィスに居る時間が多くなりそうなので、デスクワークでイノベーションを起こしていきたいと考えています。

お楽しみに!

 

 

 

 

 

ゲーム・チェンジャーの登場が待たれる!

 

CFRP、カーボンは軽量化の切り札」という言葉は過去のものになるかもしれません。

 

※ゲームチェンジャーは、物事の状況や流れを一変させる個人や企業、プロダクト、アイデアのこと。   もともと、野球などのスポーツの試合(ゲーム)で、途中出場して勝負の流れを変えてしまう選手のことをゲームチェンジャー(Game Changer)と呼ぶ。

 

炭素繊維だけが、低比重、高引張強度、高弾性ではありませんが、これまではその性能が突出していたためにCFRP、CFRTPとその需要を広げてきました。

 

炭素繊維の歴史については東レ様のトレカホームページに記されています。

https://www.torayca.com/aboutus/abo_002.html

炭素繊維の発明は、日本の宝ですが、大阪工業技術試験所 進藤昭男博士は最初から「炭素繊維を開発しよう!」と研究が始まったわけではありません。当時、日本の化学繊維産業は海外メーカーの台頭により、商品のコモディティー化を受け、糸へん産業は不況に陥っていました。大阪に本社を置く繊維メーカーの窮地を救うために、化学繊維の新しい出口を探求していた時に、海外の論文で炭素繊維に関する記述を発見し「FRPに使われるガラス繊維と同等以上の性能を得ることができる」と開発に着手され、レイヨンの用途開発として、始まった炭素繊維研究であったが、PAN(ポリアクリルニトリル)が化学繊維の中で、加熱焼結後の炭素繊維としての残留が多いことからPANに絞ってその研究を完成させ、国際特許化されたものです。

 

また、別のページ

https://www.torayca.com/aboutus/abo_001.html には

「PAN系炭素繊維は市販されている炭素繊維の90%以上は、PAN繊維を原料とするPAN系炭素繊維ですが、これは性能とコスト、使い易さなどのバランスがピッチ系炭素繊維に比べて優れているためです。」と記されています。

 

炭素繊維の特長は、何と言っても軽くて強いこと。比重が1.8前後と鉄の7.8に比べて約1/4、アルミの2.7あるいはガラス繊維の2.5と比べても有意に軽い材料です。その上に強度および弾性率に優れ、引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍と優れています。これが、炭素繊維が従来の金属材料を置き換える軽量化材料として本命視されている理由です。」と紹介されています。

素晴らしい性能です。

ただ、それはユーザーとしては、材料を選ぶ際に大きな問題がありました。

工業デザイン事務所マジックボックスJPは、これまで家電メーカー、自動車会社の表面材料開発を受託してきました。その際に、炭素繊維では避けて通れない問題点に直面して来た経験があり、「だからカーボンは使えない」という場面を何度か経験してきました。それは、電波透過性です。軽量高強度を活かして、CFRP、CFRTPはこれまでパソコンのケースやスマートフォンの一部に使われてきましたが、使えない部分がアンテナ部でした。

「カーボンは軽くて強い新素材」というイメージがつよく、カーボンパターンと呼ばれる3K平織、綾織で織った黒いアラミド繊維等が開発され、海外ブランドの携帯電話に使用されました。電波障害を起こす原因は、炭素は導電性が良いからです。ですから電極に使われたり、電池の負極材に使われたりします。その性質をうまく使うと「電磁波シールド性が優れている」となります。

しかし、電波を頼りにする電子機器のケースに使うには、シールド性は邪魔で、できれば炭素が入っていない炭素繊維はないかと設計者は望みます。それは、いくら飲んでも飲酒運転にならないのど越しさわやかなビールはありませんか?に近い感覚かもしれません。

 

話を巻き戻してみましょう。炭素繊維開発の発端となった「FRPに使われるガラス繊維の代替」となった、ガラス繊維は炭素繊維に「軽量高強度材料」の座を奪われたのでしょうか?

実際のところは、そんなことにはなりませんでした。

ガラス繊維生産量は世界で約550万トン/年、そのうち 450 万トンを一般 FRP 用途が占め,残り約 100 万トンを電子基盤用途が占めています。

それに対して、2019年の炭素繊維の出荷量は24,876トンで過去最大を更新したそうです。炭素繊維の出荷量は、重量比で220分の1(0.45%)、すなわち話にならない程度の「代替」だったわけです。ガラス繊維メーカーにとって、そんな1%にも満たない市場のために新たな技術開発をする理由があったのでしょうか?

 

ありました。それは世の中の産業の軽量化へのニーズの高まりです。

 

ハイテン鋼、さらに薄肉化をはかったスーパーハイテン鋼をリリースし、自動車産業の一次構造材で君臨してきた鉄鋼メーカーまでもが、マルチ・マテリアル化の名の元、複合材料研究を本格化させてきました。それは、ボンネットやルーフのCFRP化、ボディーパネルやリアゲート等、次々に樹脂化が進みました。ガラスが当たり前のフロントウインドーまでもが、比重の軽いポリカーボネイト製のスポーツカーが型式認定を受けました。ユーザー側である自動車メーカーや家電メーカーも必死です。CO2排出量制限にともなう電動化技術、百年に一度といわれる大きなモノづくり改革の真っただ中にあり、経営統合や技術アライアンスを組み、地球温暖化抑制というプレッシャーに立ち向かっています。軽くて、強くて、製造時CO2排出量が少ない材料を使っていないとペナルティが課せられる時代です。

 

今後の未来予測をすれば、5G、6Gと無線電波、無線電力伝送技術へと移行は必至です。軽量化の波は、鋼板よりも比重の軽い樹脂にもさらに薄肉化を求めます。

そんな未来で必要なのは、「炭素繊維のような」高弾性、高引張強度の、しかも導電性のない強化繊維で構成するFRPとなると結論付けられます。

 

さて、そんな「非炭素系高弾性繊維」って…あるの?

ATL時代の準備

ATL(Automated Tape Laying=自動テープ積層)あるいは、ATP(Automated Tape Placement=自動テープ配置)という言葉は最近聞かれる機会が多くなってきたのではないでしょうか?

こちらのブログにたどり着かれて、量産コンポジットを研究開発されてい方なら、説明するまでもないと思いますが、「なんだそれ?」と思われた方は、量産コンポジット技術では、少し重要な部分なのでお付き合いください。

ATP、ATLのこのAの部分が現代の量産モノづくりとのインターフェイスになる重要な部分です。これまでのCFRPモノづくりと決定的に違う部分は「Automated」か「職人の技」かです。

これまでも、CAD設計は当たり前。CAEで解析して、その形状を金型に反映して、その材料配向に従って、カッティングプロッターにより正確にカットされたプリプレグを金型に配置し、オートクレーブ(加熱加圧釜)で、あるいは熱プレスで成形し、バリをとって仕上げる。これが現代のCFRPの成形プロセスです。少し前なら、カッティングプロッターではなく、型紙にあわせてハサミかカッターで材料を切り、プリプレグではなく樹脂も合わせてハンドレイアップ成形する「職人の技」です。現在もアフターマーケット商品であれば、設備コストが小さいので「多品種少量生産」に向いたハンドレイアップ成形が市場要求の数量と生産数量を調整すれば、この「職人の技」が喜ばれます。

 

BMWがiシリーズをデビューさせた頃は、炭素繊維を織物にして、金型内にプリフォーム加工したカーボンファイバーを金型にインサートし、高圧で樹脂と硬化剤をぶつけ化学反応を安定させた効果速度の速い液体状のレジン(エポキシ樹脂)を金型に流し込むHP-RTM成形が、人の手がかからず、自動車業界のモノづくりに適合していると、本命視していましたが、BMWの想定ほど「CFの量産による材料価格のコストダウン」が図れなかったこともあり、HP-RTMは大衆車には使われず、高級車種の天井やボンネットに横展開がなされています。日本車でもレクサスやGazoo Racingには、同様の採用が広がっています。 

 

さて、ATP、ATLです。本来は航空機部品を「人間以上に正確に、安定的に、休みなくずっとプログラムに従って積層させる」ために開発された技術です。レイアップの成形速度は速くなり、ロボットの先端にある成形のために必要なユニットは小型化され、高速化が進んで…そろそろ、自動車の製造現場で働いている仲間(溶接やら組み立てをしているロボット)と近いスピードで仕事ができるようになってきています。

近年のATPの考え方は、CFの引張強度を最大限に生かして、できるだけ少ないCF量(=炭素繊維の価格が下がらないので)で効果的に金属プレス製品や、樹脂部品を強化する方向で動いています。スポーツ・アスリートが、けがの防止や、傷んでしまった部位に負担をかけないようにする「テーピング」のような考え方です。ほとんどの場合はCFUDの薄物(開繊)テープを使い、「効果的な部分に貼りこむ」というニュアンスの溶着や接着接合が開発されています。マトリックス樹脂は、個々の成形品によって異なり、熱可塑性CFRTPテープ、熱硬化性(エポキシ)プリプレグテープを、必要な位置に積み重ね、硬化させて定着させる手法がとられます。

 

JCM日本複合材マーケットは、国内外のCFUDテープをお客様のニーズに合わせて、材料をご提案し、巻き芯の大きさ、テープ長さ、テープ幅を整えた、テイラードマテリアルとして、UDテープをご提供しています。

また、すでにいくつかのCFUDテープが、お手元にあって、どうやってATP用のテープにすればよいかお悩みの方にも、スリット加工作業だけの受注も承っています。

まずは、テーピング用のテープから準備しましょう。

http://www.fukugouzai.com/prepreg-tape/index.html

 

JCM日本複合材マーケットの仕事

(株)日本複合材は2004年創業の工業デザイン事務所 (株)マジックボックスJPが2008年より運営している材料販売サイト「JCM日本複合材マーケット」www.fukugouzai.com  の運用10周年を機に分社独立させた会社です。

商材は、カーボンファイバーを中心とした、繊維、織物、組物、プリプレグ等の中間材料、最近ではオリジナルプリプレグ製作用の樹脂フィルム、CFRTP用の樹脂ペレット等を販売しいます。

 

商品ソースの多くは、日本国内ではなく海外メーカー、サプライヤーが中心です。外国製品と言っても、基となる炭素繊維は、東レ三菱ケミカル東邦テナックスの糸が多く、日本の炭素繊維メーカーが正規に輸出した糸を、海外(CFRP製品を量産している地域の)中間材料メーカーが商品化したものを、独自のルートで輸入し、販売しています。

あえてコスト重視でというリクエストには、FORMOSA(台湾プラ)Dow Aksa(トルコ)の糸や、中国の糸で生産された中間財も手配は可能です。

 

なぜ、日本複合材の商材が、外国製品中心になるか?

弊社は、上記にもありますように、もともと工業デザイン事務所です。材料の技術開発、成形技術の開発案件をユーザー企業側に立って案内することが主務となっており、お客様が私どものような事務所にコンサルティングを依頼される場合は、ほとんどが量産案件とその基礎的な研究開発となります。

日本国内でCFRPの量産は、これまでほとんど行われておらず、試作開発でも近隣のアジア圏で行ってきました。その「量産に向けた試作開発」の段階で、現地の協力者から紹介を受けて、いろんな中間材料メーカーと知り合い、成形工場と交流を持つことで、JCM日本複合材マーケットの商材は拡大し、小規模ながら確実に、量産対応できるサプライチェーンを形成してきました。

www.magicbox.jp