3年前にブログをはじめましたが、記事のボリュームが大きく、また、内容的にも公開には不適切と思われるものもあったので、公開を中止していました。
過去には、定期的にご覧いただいていた方もおられたのに、急にクローズにして申し訳ありませんでした。2017年になったことだし、周辺の環境も変わってきました。
少しずつ、初めてまいりましょうか。
3年前にブログをはじめましたが、記事のボリュームが大きく、また、内容的にも公開には不適切と思われるものもあったので、公開を中止していました。
過去には、定期的にご覧いただいていた方もおられたのに、急にクローズにして申し訳ありませんでした。2017年になったことだし、周辺の環境も変わってきました。
少しずつ、初めてまいりましょうか。
自動車向けの量産CFRP部品の試作開発トライが、各方面で始まっています。まずは成形技術の確保いうことで、熱プレス成形を基本としたトライアルが成功している例が、いくつか聞こえてきました。
また、市販が開始されているBMW i3の実車も次々とデリバリーが開始され、友人や協力会社のガレージにも鎮座しています。そのBMW 13のスケルトンボディーを指して「日本の自動車メーカーでは考えられない仕上がりの悪さ」「これでよく品管がパスできたよね」と言う感想も聞いています。
「日本のメーカーが出すのはもっときれいなモノでないと・・・」
本当にそうでしょうか?
SONYのVAIOコンピュータが、CFRPケースを採用した時、日本の他社は追従をしようとしましたが、SONYからCFRPケースの開発、供給を引き受けていた国内CFメーカーは、表向きには他社への開発供給を行いませんでした。すでにスポーツ用品、自転車部品などで量産体制のある台湾の成形工場に依頼を行いましたが、量産といっても手作りの要素が多いCFRPケースは、若干の品質のムラがあり、日本の家電メーカーの品質基準を満たすことはとても難しい状況でしたが、台湾のASUS、AcerまたそれらにパソコンのODM開発を依頼している、アメリカン・ブランドは、CFRP製品の品質の管理基準を射出成型のものとは別基準として、商品化に踏み切りました。
結果的にCFRPケースのラップトップコンピュータは、世界的に大ヒットしました。材料はカーボンとは限りませんが、先端複合材を採用したスマホ、タブレットは台湾で、今なお中国で量産されています。
振り返ってBMW。「成形が美しくない」と自動車メーカー関係者から揶揄されるi3ですが、日本の街並みに、どんどん増殖中です。同時に発表されたスポーツカーのi8に至っては、
2年以上のバックオーダーだそうで…。「先行、逃げ切り中」というところですか。
「量産コンポジット」と言っても、
これからカーボン・コンポジットで何かがしたいと思っているお客様には専門用語がたくさんあって、しかも当たり前のように専門用語を並べられても、わけが分からないと仰る方も居られます。
企業の研究開発部門、FRP/コンポジット産業、大学の研究所、すでに何年もコンポジット産業に従事されている皆様には、当たり前のことでも、少し専門が違うとその製造のマナー、時には言語まで違ってしまうものです。
フィッシングロッドやゴルフクラブの「高級品の代名詞がカーボン」だと思っていたら、ANAやJALが新規に採用されているボーイング787もカーボン製…自転車も何十万円もするものはほとんどが「カーボン」を使っている。 ラップトップパソコンも、スマホまでもカーボンの時代が来ている。もうすぐ自動車にも本格的に採用される動きがあり、ヨーロッパでは自動化して量産し始めているらしい…。
そんな話を見聞きして、 カーボン・コンポジット、カーボンでのモノづくりに興味を持つと、次に出てくるワードが「プリプレグ」です。Pre-Preg(=Pre-Impregnated、前もって含浸された)のことで、カーボンなどの繊維に、前もって樹脂を含浸させた中間素材のことです。繊維基材、樹脂(マトリックス)の組み合わせによって多くの種類があります。逆に言えば、用途に合わせて多くの種類の組み合わせを作り出すことができます。
樹脂(マトリックス)は、大きく分けて熱硬化性と熱可塑性に分かれます。
熱硬化性の代表的なものはエポキシ樹脂で、カーボン・コンポジット=エポキシ/カーボンと同義語のように使われてきました。近年では、エポキシ樹脂の改良が進み、成形時間の大幅短縮、耐薬品性の向上、耐火・防炎仕様など量産ニーズに即した商品も発表されています。
熱可塑性カーボン・コンポジット(CFRTP)は、日本においては現在、最もホットなものづくりとなっており、世界各地で熱可塑コンポジット材料とそれを使った成形技術の開発が行われています。 熱可塑生のコンポジットが日本で今、注目されているのは、樹脂(マトリックス)が、これまでの日本のものづくりで量産してきた熱可塑性プラスチックであるからでしょう。
射出成形で強化繊維(短繊維)入りのペレットを使い製品の機械的強度の向上をはかり、また別部品を入れ込んでのインサート成形や表面加飾のためのフィルムインサート成形などの技術的土台があり、そこに熱可塑プリプレグとの組み合わせでさらなる高度化、進化を進めているというところでしょうか。
量産コンポジットの材料、成形技術は欧米で開発され、台湾・中国で実用化されてきました。日本は外国勢に先行を許していました。熱可塑プリプレグは、数年前まで欧米のサプライヤーしかありませんでした。(年代を20世紀まで遡ればありましたが)すなわち、極端にユーザーが少なかったということが分かります。
日本のものづくりは精度は高く、品質管理のレベルが高いのが当たり前で、コンポジットにもその外観品質、組み付け精度を要求します。台湾、中国の通常の生産品ではなかなかQCをパスできません。
日本の産業界が本気で量産コンポジットの開発に取り組めば、必ず先行している海外のライバルに追いつき、そして追い越すものと考えます。
従来のコンポジット産業界以外からの参入が続いています。そのニューカマーが、実は日本の量産コンポジットの鍵を握っていると思います。
次回は、プリプレグの具体的な例をご紹介していきましょう。
(JCM日本複合材マーケット、旧サイト「熱可塑プリプレグ」から加筆・転載)
続きを書きました。
前回は長文になってしまい、肝心のLet It Goにまで、話ができずでした。欧米と日本の産業構造が違うので、日本で欧米の量産システムをそのまま持ち込むのは??ではないかというわけです。高度経済成長を経験していない新興国に工場を建てるならまだしも、すでに大量生産~多品種少量を経験している製造業に従事している各社が、単純に材料と生産システム(ロボットを含む)を導入して、欧米人のマネをするなど、ちょっと考えると有りえない話だと思います。
日本では、というよりも、日本国内でも各社各様でその生産品も生産システムも異なります。コンポジットは言うまでもなく複合材料のことで、カーボン等の工業用繊維と樹脂素材の組合せです。(※広義には、樹脂素材とも限らず金属材料や天然素材も含みます)量産化の方法は、各社各様で良いのです。
「130℃硬化エポキシ+カーボン織物の積層でないとカーボンコンポジットではない」とお考えの方々も居られます。それは、それで正しいと思います。オートクレーブ成形しないとCFRP製品ではないと考える人が量産する方法は、同じスペックのアルミの金型を100面以上用意し、プリカットしたプリプレグを数十人の成形スタッフか、レイアップ・ロボットハンドを使って、金型にジャンジャン貼りこみ、同じスペックのオートクレーブを数基並べて、時間差で次々に稼働させる…。数年前に台湾のラップトップ用CFRPパネルの製造工場はこんな感じでした。
プレス成形が得意な会社は、その会社の設備に会った材料を選んで(無ければテイラード材料を作らせて)加熱プレスすれば良いです。現在の日本では、加熱+冷却プレス成形で、コンポジットパーツが作れるように、新しい材料が次々に発表されています。
射出成形が得意な会社は、熱可塑性プリプレグをその会社の設備にあったスペックで調達し、インサート成形や、より薄物のプリプレグを手配してフィルム・インサート成形の要領で短繊維や繊維長の長いCF入りのペレットを射出成形するのが良いです。
真空成型が得意な会社は、熱可塑性プリプレグを樹脂リッチで手配し、樹脂シートの加工の要領で真空成型できます。
樹脂ブロックや金属ブロックからの削り出し加工がお得意な会社は、カーボンのブロックからの削り出しをお勧めします。最近は良い刃物も発売されているので、刃物の最新情報を集めて、御社の機械の最適なものを選んでください。決して刃物は金属用のまま加工しないでください。すぐにヘタリますし、イヤになると思います。
ウレタンバンパーなど二液混合の成形機器をお持ちの会社は、RTM成形が近くにありますが、どのようにカーボン材料をどのタイミングで組み込むかをご検討下さい。
まずは、既存の材料を手に取って、御社でどう料理するか、よーく考えてみてください。
売っている材料なら買えば良いですし、売ってなければ、作れば良いのです。材料ごと作ってしまえば、他社の追従はありません。
量産コンポジットは、まだまだ開発途上です。だから、Let It Goなんですよ。
量産コンポジットの世界。とタイトルさせていただいているこのブログですが、それはどういうものでしょうか?BMWがi3、i8を発表し、発売しています。日本の自動車メーカーはそれを追従するでしょうか?
BMWがとったRTM成形は日本の自動車メーカーやその部品供給を行っている部品メーカーにとって、最良の自動車用コンポジット成形技法でしょうか?
BMWの説明を聞けば「最良の量産コンポジット生産体制」だと思います。BMWは、レースベース車Mシリーズのトランクやルーフ、ボンネットの生産を量産車で行ってきました。ユーザーが求める製品のクオリティを維持し、材料コストや生産の機械化などを試してきたのだと思います。そのBMWがSGLを買収し傘下に収めて、カーボンの炭化コストまでもツメて、創り出したシステムですから、他社には絶対にマネできない素晴らしいシステムです。
BMWが、カーボンコンポジットを採用してきた背景には、レース用部品での高強度、軽量化における信頼性の積み上げとコストカットができるサプライチェーンの構築できる目途がついたからでしょう。(現在のところは、まだキビシイというウワサですが…)
日本のものづくりと欧米のそれは、明らかにその流儀というかマナーが違います。日本では高度経済成長を支えた大量生産技術には、FRP(繊維強化プラスチック)は、含まれていません。鉄鋼で重工業を支え、石油化学製品で大量生産してきました。軽いモノが欲しい時はアルミ合金等の軽金属で押し出して、型に鋳込んで。プラスチックは溶かして、射出して、押し出して、真空成形して…。
FRPはFRPだけの特殊な用途の大型少量生産品(クーリングタワーやボート、ヨット、競技場のベンチやお風呂、洗面台等)に使われ、自動車では特装車やキャンピングカー、救急車などに使われてきました。FRPは廃棄、リサイクルなどの技術が確立していなかったこともあり、自動車部品の樹脂化が進んで、プラスチックパーツで軽量化や安全性、デザイン性の向上がはかられても、なかなか長繊維ファイバーのFRPは日本では敬遠されてきました。
その点、アメリカでは、キットカーが合法的に走ることができ、過去に発売されたスポーツカーのボディには、FRP、SMCが多用されてきたので、日本よりは量産コンポジットの敷居は低いと思われます。
ユーノス・ロードスターのボディの材質と、シボレー・コルベットスティングレー(代表的なアメリカ製スポーツカー)ロータス・エラン(代表的な英国製スポーツカー)の材質を比べると、過去における自動車部品のマナーの違いが解ると思います。
(つづきます)
前回のコンポジット・スプリングの話のつづきです。
アウディが採用したスプリングについては現物を見て、開発者にその詳細を聞かないことにはよくわからないことがありますが、弊社が、過去に製作したカーボン・コンポジットスプリングについては、作ってみて、いくつかわかったことがあります。詳細についてイロイロ書くと、開発にご協力いただいた企業様もあるので、何かと問題もありますが、基礎知識としてお伝えできることを書いてみましょう。
コンポジット・スプリングのメリットとして挙げられるのは、まずは重量です。金属(鋼やチタン等)スプリングと比べるともともとの材質の比重が違いますから、同じサイズで作ると明らかに軽量になります。もちろん弾性や剛性を考慮して、同等の性能を出そうとすると、線径は太くなります。その体積が増えても、重量的にメリットあります。
次に、腐りません。コンポジット・スプリングはVfがどうであろうと、基本的に樹脂に被覆されているので腐りませんし、アウディのようにその樹脂を原料着色すれば、塗装仕上げも不要です。
コンポジット(複合材料)は、線膨張係数の異なる材質を組合せているわけですから、金属スプリングのように単一材料ではないので、それを共鳴することはなく、微振動を吸収します。
上記の理由もあって、コンポジット・スプリングは金属よりも疲労が少なく、ロングライフです。自動車用のサスペンションでは鋼のスプリングでも、長期間使用して疲労破壊が起こることはほとんど無いとは思いますが、ヘタってきたり、縮んで、がたつきが出てきます。コンポジット・スプリングは疲労によるヘタリがなく、いつまでもしなやかです。
こういった、コンポジット・スプリング。量産するなら、どんな用途があるでしょうか?
ベッドやスプリング入りマットレスなどいかがですか?ロングライフということを考えれば、建築関係の耐震/免震にも役立ちそうです。
自動車業界以外にも、量産コンポジットは用途がありますよ!試してみませんか?
JCM日本複合材マーケットでは、ご希望のサイズ、スペックでの試作、試験用の少量生産から対応させていただきます。お問合せ下さい。
アウディはGFRP(ガラス繊維強化ポリマー)製の新しい、軽量なサスペンション・スプリングを今年中に同社のアッパー・ミドルサイズの車種に採用すると発表しました。
そのGFRPスプリングですが、アウディはイタリアのサプライヤーの協力を得て開発をしてきました。スチール製のスプリングとは見た目にも異なります。ライトグリーン色です。
ファイバーストランドは、スチール製のコイルスプリングよりも太く、巻の外形も少し大きく、コイルの数は少し少ないです。しかしながら、40%軽量になりました。
アッパー・ミドルサイズの乗用車用のスチールのバネは、通常約2.7kg(6.0lb)の重さであるのに対して、同じ特性によるGFRPバネはちょうど1.6kg(3.5lb)の重さです。それにより4つのGFRPスプリングは4.4kg(9.7lb)車両重量の低減を実現します。その半分はばね下質量に関係しますので効果的です。
アウディの技術開発部門の取締役であるハッケンバーグ博士は「GFRPスプリングは、重要な部分での重量低減に貢献します。それにより、正確なドライビングと振動低減による快適性を提供できるようになりました」と言います。
スプリングの中心部分は、エポキシ樹脂を含浸させ、一緒に捻じられたたロングファイバーフィラメントの・グラスファイバーから成ります。 この構造は、フィラメントは±45°の角度で交差し、これらの引張と圧縮の重複は、最適に、構成要素に作用しているストレスを吸収するために、お互いを相互に支持します。
各スプリングは、100°C/212°F以上で、オーブンで硬化します。(専用のエポキシ樹脂を使っているようです。注:MBJP)
アウディによってあげられる、これ以外のGFRPスプリングの利点としては、
メンテナンス性の向上、耐腐食性の向上、耐薬品性の向上、製造中におけるエネルギー消費量の削減があげられます。
出展:Compoistes World 誌デジタル板
http://www.compositesworld.com/news/audi-to-introduce-gfrp-suspension-springs-before-years-end
JCM日本複合材マーケットでは、海外の研究機関、ブレイディング織物工場、エポキシ樹脂メーカー、RTM成形工場との連携により、カーボン・コンポジットスプリングの量産供給が可能です。ご希望のサイズ、スペックでの試作、試験用の少量生産から対応させていただきます。お問合せ下さい。