プリプレグって何?4年ぶりの続き2

フィルムスタッキングついて、少し追加しましょう。弊社でも取り扱っている、ソフトカーボン(レザー)と呼ばれるのは、このフィルムスタッキングの派生です。「ラミネート」と呼ばれることもあります。ソフトカーボンは、皮革の様な使い方ができるようにコンポジット化させず、繊維は布のまま「動ける」状態です。炭素繊維と熱可塑性の樹脂フィルムを重ねて製造しますが、完全含浸をさせないところがミソです。「リアル・カーボン=本物の炭素繊維」ですが、軽くはありませんし、繊維に樹脂が含浸しているわけではないので「Prepreg」とは言えませんね。ハサミでカットできますし、縫製もできます。本物の炭素繊維を内包しているので、牛革よりも伸びず、型崩れがしにくいので、ヘビーデューティーなカバンや財布の製作には良い素材です。

 

プリプレグから、横道にそれました。熱可塑プリプレグの製造方法はフィルムスタッキングの他には、パウダーコーティング、織物プリプレグ、液体含浸プリプレグがあります。工業的にCFRTPを使用しようとなるとVf(ヴォリューム・ファイバー=繊維含有比)あるいはRC (レジン・コンテント=樹脂含有量)の管理が重要です。炭素繊維に対して何パーセントの樹脂が付いているかです。これが安定しないと成形不良や狙い通りの性能が発現しません。

フィルムスタックでは、同じ面積重量の炭素繊維に対して、何gのフィルムを重ねたかでわかりますね。パウダーコートティングは、熱可塑性樹脂のペレットを粉砕して、パウダー状にして炭素繊維に溶着含浸させたものです。炭素繊維に静電気を発生させ、安定的に樹脂パウダーを吸着させ、加熱溶着処理をすることで、付着を安定させます。イメージとしては、炭素繊維に電着粉体塗装したようなものです。パウダーの粉砕具合にもよりますが、繊維に電気的に引き込まれますので、フィルムよりも深いところまで樹脂パウダーは入り込みます。

織物プリプレグは、以前にもご紹介しましたが、炭素繊維と熱可塑性樹脂の糸を一緒に織ることで、樹脂量を決定します。炭素繊維のヤーンとナイロンなどの糸とを混織するタイプと、糸自体がコミングル・ヤーンと言って糸(ヤーン)のなかで、炭素繊維と熱可塑性樹脂糸を所定の比率で混紡したものを使う場合とあります。

液体含浸は、アクリル(PMMA)やPES、熱可塑性エポキシ樹脂の場合、低分子の液状の樹脂に反応性促進剤と一緒に炭素繊維に浸み込ませ、炭素繊維に絡み合った状態で高分子化させます。すると液体の状態で繊維に浸み込み、加熱により重合が促進し、熱可塑性のシートができます。一度重合できてしまうと、他の熱可塑プリプレグと同じように加熱により動き、冷却すると固まる。という特性をもちます。

 

イロイロ、あるでしょ。それぞれ、良いところも悪いところもあります。

 

 

 

 

 

 

 

プリプレグって何? 4年ぶりの続き。

はてなブログアクセス解析を見ていると、圧倒的に「プリプレグって何?」というページに来られている人が、圧倒的に多く、その4年も前のページを読み直してみると…最後に「次回は、プリプレグの具体的な例をご紹介していきましょう。」としながら、すっかり続きを書くのを忘れ(一時期は、実際にブログの更新も忘れ?)まじめに量産コンポジット、プリプレグ漬けの毎日を過ごしておりました。ブログを見直すと、次は別の話題からスタートしていたことに先ほど気が付きました。

これほど「プリプレグって何?」と思っている人が居られるってことは、ふだんこれまでの人生で「プリプレグ」というモノに出会って来られなかったのでしょう。

 まずは、Pre-Preg(=Pre-Impregnated、前もって含浸された)のことで、カーボンなどの繊維に、前もって樹脂を含浸させた中間素材のことです。炭素繊維業界では、フィラメント(糸)ヤーン(糸の束)UD(糸の束を並べた一方向性材料)ドライファブリック(ヤーンを織った織物で樹脂のついていないもの)ブレイディング(組紐状のチューブ)などの用語があり、それらに樹脂を染みこませたものをプリプレグと呼びます。

このプリプレグ(時々、プレプリグって言っちゃう人います)、以前のブログでは、

大きく分けて熱硬化性と熱可塑性に分かれます。

と書いていますが、実は別の分け方もあります。というのは、熱可塑性のプリプレグは、マトリックス樹脂の供給形態とユーザーの使用したい形態からいろんな種類があります。ユーザー側の層が幅広くなるということは、その素材に対する呼称も変わってきますし、認識にもずれが生じますので、材料屋としては注意深くお客様のご希望を聞く必要があります。

コンポジットパネル(シート)。これは、樹脂が完全にしみこませてあって、熱硬化性の場合は切削加工するしかありませんが、熱可塑性樹脂の場合は、一部、または全部を再加熱することにより形状を変えることができるものです。

フィルムスタッキング。これは、熱可塑性樹脂をフィルム状にしたものを炭素繊維の内外に挟み込み加熱したものです。面的に熱をかけて完全に樹脂が溶けたものや、あまがみ状態でやんわりと半分含浸したもの、樹脂フィルムとカーボン基材をスポット溶接したようなものもあり、これらをセミプレグ(semi-preg)と呼ばれることもあります。なぜセミプレグの様なものが必要かというと、完全に含浸した硬い板状なら成形時に金型に沿わせるために事前に加熱し柔らかくする必要があること。その工程でも時間と加熱装置のエネルギーコストがかかること。最終製品が完全含浸してればよいではないかということです。また、再加熱で柔らかくなる熱可塑性樹脂ではあっても、熱履歴を少なくすることで、樹脂の劣化を少なくしたいという場合など「完全含浸ではない方が良い場合」があるからです。フィルムスタッキング以外にも熱可塑プリプレグは作る方法があって…。

あ、なんかエライ長文になっていますね。読んでいただく方も、そろそろお疲れでしょうから、続きは次回にしましょう。

 

composites.hatenablog.com

 

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elg カーボンファイバー(回収炭素繊維)の使用例

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日本では、まだまだ馴染みのないelgカーボンファイバーですが、elgの本国、イギリスでは、すでに量産車に使われています。量産と言っても、スポーツカーの構造用パネルに↑の写真のように使っています。

F1レーシングカーデザイナーとして名高い、ゴードン・マーレイ氏が率いるデザイン事務所が、elgの回収炭素繊維マットをプレス成形して、パイプフレームと組み合わせて使っています。

東レが 2011年に自動車業界向け発表したコンセプトカーの’TEEWAVE' AR1 (Toray Eco Efficient Wave Advanced Roadster 1)もこの事務所が作成しました。

 

さて、このiSTREAMシャーシは、優秀なスポーツカーシャーシで、イギリスのTVRが最新の量産車に採用しています。

TVRって日本じゃ、見ないよね…」と、思われる方もいるかと思いますが、iSTREAMシャーシは、3年以上前に日本にも上陸しています。

それは2015年秋の東京モーターショーで、ヤマハが発表したSPORTS RIDE Conceptというコンセプトカーもi STREAM3シャーシを基として作られています。エンジン、オートバイのメーカーが、ショーモデルとは言えランニングプロトタイプをシャーシから開発するのは大変です。オートバイのフレームのような軽量なパイプワーク+CFRPパネル材の構成は、同社のコンセプトにも合致していたのでしょう。

基本的に金属パイプフレームで、バードケージを組み、熱可塑性樹脂(PA6)と混紡のCF不織布を熱プレス成形したパネルを接着接合して、構造メンバーの一部として使われています。まさにアルミパネルの代替品として、軽量なTMシートを使っている例です。

↓は、東京モーターショーで展示されていた、SPORTS Ride Conceptのシャーシです。

(GMD、iSTREAM CARBONのロゴが見えますね)

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さっそく、使ってみませんか?熱可塑性CFRTP不織布パネル。熱プレス設備があれば、すぐにCFRPパーツが作れますよ。

TMシートは、800x1000サイズ、1枚からでも販売可能です。

↓は、銘柄まで含め、上記の材料そのものです。

http://www.fukugouzai.com/pre-preg/tm-sheet.html

 

 

CARBISOのネーミング由来

JCM日本複合材マーケットで、最近にご紹介し始めたTMシートは、elgカーボンファイバーのCARBISOのTM(Thermo/Mat=熱可塑繊維とCFの混紡)マットを、熱プレスにより、板状にしたものです。

さて、そのCARBISO(カービソ。英国風だとカーバイソと発音)ですが、日本人の感覚だとあまりカッコイイ響きではないですよね。「カー味噌?」「カー美装?」

一昨日、ポートメッセ名古屋で「自動車軽量化展」にelgカーボンジャパンさんが、出展していて、現場に英国から来られた方が居たので聞いてみました。

「CARBISO。なんて発音するの?何でこんなネームにしたの?」応えは意外とシンプルでストレートでした。「CARBON ISOTROPICITY(等方性)」だそうです。

(金属材料と同じように)「等方性の」カーボン。ということです。

等方性のCFマットに熱可塑性糸を混紡し、それをプレスしたものがTMシートです。

等方性の金属製シート材と同じようにプレス成形できる「熱可塑プリプレグ」シートです。完全含浸していないいわゆるセミプレグ状態なので、金型に投入し加熱すると、熱可塑剤が緩み等方性のカーボンマットは動きやすい状態になります。加熱加圧し、ガラス転移点以下で脱型すると金属プレス成形品のように深絞り製品も製作可能です。加熱冷却装置のついたプレス機があれば、すぐに金属板の代わりにプレス加工できます。

 

部分的な補強や方向性を持たせたい場合は、UDテープやCF織物と同時に成形することも、もちろん可能です。

http://fukugouzai.com/pre-preg/tm-sheet.html

 

 

 

 

 

 

elg カーボンファイバー(回収炭素繊維)

JCM日本複合材マーケットには、これまで幾多のリサイクル品に関する話がありましたが、それを紹介することはありませんでした。それは代表者が大手家電メーカー、自動車メーカーの技術コンサルタントとして契約し、実際の量産メーカーの製品開発の側に立って材料開発を提案してきたからでした。

これまでのものは「安くても、決して手を出せないモノ」でした。

「国内の重工各社が航空機の部品を作るときに出た端材がある」

「名前を明らかにできないが、大手CFメーカーの製造工場で、生産時に出る端材があるので買わないか?」

「リサイクル材だと言っても、CFRPを高温で焼結処理してあれば、炭素繊維だけが残る」

それらは、性能的に低い側で見積もっても、お得感があるように思える…。

 

カーボンを使っての量産品で軽量化をはかるなら、不織布のプリプレグをプレスするか、LFT-D(長繊維)あるいは、短繊維を射出成形で行えば必ず、軽量化性能の向上が見込ます。

これまで、射出成形や金属ダイキャスト成形を得意としてきた成形工場で作る部品の採用を考えれば、材料的にも実績があり成形設備もこれまでのモノを流用するか、成形機を新規導入する場合も、これまでの技術の流用がしやすいためです。

問題は材料コスト。その点を考えれば、バージン材よりも端材やリサイクル材を使うのが有利です。連続生産された炭素繊維をあえて切断するよりも安い。リサイクル材を使いたい要件です。でも、これまでのリサイクル材の話には、乗れない要素が決定的にありました。それは「品質保証」です。

量産工場であれば、製造者責任を問われる商品を製造販売している会社であれば、そのトレーサビリティと、その保証された品質に基づいて、製品を設計し、プロダクトにします。ですので、いくら有名な商社から「リサイクル・カーボンあります。安いですよ」と勧められても、誰かが品質保証をしてくれない限り、量産材料には使えなかったのです。それは、その後のLCAにも大きく影響します。

 

「ELG回収炭素繊維」は、非鉄金属のリサイクル材では世界No.1のELG社(英国)が、特許技術の回収システムで分別、回収し、品質保証のペーパーを発行している回収炭素繊維です。単に「リサイクル炭素繊維」とひとまとめにせず、どういった由来(炭素繊維の流通経路)のCFであるか、繊維の弾性率によって4つ(標準、中弾性、高弾性、超高弾性)に分類し、独自の技術により中間材料の様々な姿にして、商品化に成功しています。

 

JCM日本複合材マーケットが、自信をもってお勧めできる量産用のカーボンです。

 

 

 

株式会社 日本複合材 登場!

早いもので「JCM日本複合材マーケット」は、サイトオープンから10周年になります。
家電メーカー向け材料開発、成形品の供給工場の調査研究から、炭素繊維メーカー、中間材料メーカー、海外成形工場でのトライアルを通じて得た、熱硬化性CFRPおよび熱可塑性CFRTPの材料、コンポジット部品の可能性を紹介してきました。

JCM日本複合材マーケットは、これまで、「コンポジット・デザイン事務所が運営する材料販売サイト」として運営してきましたがサイトオープン10周年を機に、株式会社 日本複合材として法人化しました。

今後とも、よろしくお願いいたします。

http://www.fukugouzai.com/company_profile.html