カーボン・ファブリック(炭素繊維織物)について

ブログの更新をしないといけないなぁ。と、思いながらも、結構忙しかったり、目の前にある「とても面白いハナシ(案件)」は、守秘義務など、いろいろな制約があってBlogに出すわけにもいかないし…。で、過去にどんな記事を書いているかを見直すと、意外と、基礎的な部分について紹介していないことを発見しました。

 

カーボン・ファブリック(炭素繊維織物)のことです。一般的に「カーボン柄」と認識されているのは「3K平織」と「3K綾織」を指します。最近では「綾織」の方が「カーボン柄」と称される事が多くあります。

さて、その「3K」ですが、Kはキロ=1000を表しています。ですので「3K平織」は

「3000本の束(トウ)の炭素繊維を平織(Plain Weave)したもの」という意味です。

一般的には「3K平織200g/㎡」と表示されるのは、㎡あたり200gになるように織った織物(インチ角あたり、経糸12.5本x緯糸12.5本)が、通常、流通しています。

 

平織と綾織の違いは、「織柄の違い」と思っておられる人も多いと思います。「やっぱり、綾織りの方がカッコ良いね!」とか仰る方もいますが、本来は、用途が違います。

平織は、まさにプレーンは織物で、経糸緯糸が一本ずつ交差している連続です。それにより、縦と横の糸は釣り合っていてフラットな平板等の製作に適しています。

綾織(2/2綾)の場合、1本飛ばしで、織っています。ですので、綾織りの方が、糸が動きやすく、立体成形に適しています。

 

JCM日本複合材マーケットでは、綾織りでも、パウダーコートやサイジング処理をして「動きにくい綾織」をご提供することもできますし、平織でも、㎡あたりの重量を少なくして、「しなやかに沿いやすい平織」をご提案することも可能です。

 

カーボン・ファブリックについては3Kだけでなく、6K、12Kなど、ご用意しております。お気軽にお問合せしてください。

 

 

 

日本最大の技術データベースサイト

このブログをご覧になっておられる方は「CFRPで量産を検討している」「カーボンの材料情報が気になる」という方ではないかと思います。

これまでも弊社は家電メーカーや自動車メーカーの複合材料開発、中間材料メーカーのコンサルティングをしてまいりましたが、いろんな場面で「そろそろ量産の検討かな」という場面が見え隠れしてきました。JCM日本複合材マーケットでも、以前よりも具体的な材料(および成形品)のお問合せが増えてきました。

「生産技術は、ある程度確立したので、次のステージは実際の商品に落とし込んでいくことを想定してコスト重視で材料の話をしたい」という感じでしょうか。

日本国内にある製造設備で、仮に大幅な改造を加えたとしても、国内でCFRP、CFRTPで構造材で量産できる方法は限られます。

その観点で、JCM日本複合材では、量産を考慮したCF中間材料については、その手配が完了しています。量産を検討する上で、コンペティティブなプライスでの提供は当たり前です。気になることがあれば、何なりとお問い合わせください。

さて、昨年のおわりに日本最大の技術データベースサイトIPROS様から「カーボンのものづくりが日本国内でも動き出しています。会員企業様でもCFRP加工、CFRTPを使った成形技術をお持ちの会社はおられますが、CFRPの材料を供給する会社の情報がまだ少ないので」とお声掛けいただき、トライアルを行なってきました。

この1、2か月の間に、IPROS経由でお問合せをいただいて、実際にお取引実績が発生しました。熱心な営業サポートスタッフさんにその話をすると驚いておられました。

資料をいくつか見てもらうと「こういった情報をIPROS会員様は必要としているんです。早くアップロードしてください!」と言っておられました。

まだ、始めたばかりで、コンテンツは充実していませんが、IPROS様のご指導もいただいて、お客様のCFRPモノづくりの材料情報をわかりやすく、ご案内していきたいと考えています。お楽しみに。

 

 

premium.ipros.jp

基本に帰って、俯瞰して見てみる

新年あけましておめでとうございます。

こちらのブログはなかなか更新できなくて申し訳なく思っています。ところが、アクセスを見てみると、少しづつではありますが、ご覧いただいている方が増えていて、きっと「新しいコト何か言っていないか?」と覗いていただきながら、更新されておらずがっかりさせてしまっていると思います。

さて、先日、自働車軽量化展・Automotive World 2019に行ってきました。自働車の軽量化は普通に考えても「善」「良いコト」で、特に自動運転やパワーユニットが変わりゆく中で、自動車の軽量化に対する取り組みは多岐にわたり、盛況な展示会でした。

その中で、CFRP部品を展示している材料商社さんのブースで、その展示を見ていると、ゴルフのヘッドのような、中空の部品があり、それを熱心に眺めている技術者と思しき男性が、ブースの若い説明員と話している隣に居ました。

訪問客「これは、どうやって作っているの?どの材料を使っているの?」

説明員「材料は、弊社で取り扱っているCFRPの成形材料です」

訪問客「どうやって作るのコレ?」

説明員「…私は、ちょっと、わからないので聞いてきます」

少しして

説明員「弊社の協力会社が特別な方法で製造しています」

訪問客「だから、どんな材料を使って、どうすればこれが作れるの?」

もう一度、誰かに話を聞いてきて

説明員「特殊な製法で、それは企業秘密なので言えないそうです」

訪問客「なら、どうやってこの材料を使うんだよ!」

と、訪問客は怒って、手にしていた展示品を置いてブースを離れました。たぶん説明員が聞いた相手も解らないからいい加減な返事をしたのでしょうか?

「あらら…」と思って、ちょっと気の毒だったので、ブースを去った人に、少し離れた場所で声をかけ、

「先ほどの製品は、何も特別なモノではなくて、熱硬化性エポキシプリプレグを使った内圧成形という方法で、熱プレス成形の派生技術です。新しい技術ではなく、人手がかかるので日本では、その製法はほとんど使われませんが、テニスラケットや自転車のフレームを製造する基本的なCFRPの成形技術です」と教えてあげました。

内圧成形が企業秘密とは、どれほど特別な会社なのでしょうね?(笑)

 

前置きが、長くなりました(え?これが前置き?)

説明員さんが、自社が展示しているモノさえも説明できないのは問題だと思いますが、自分が見てわからない製造技術のための材料を選ぶ必要はありませんよ。と、言いたいわけです。

このブログをご覧になられている方は、たぶん「CFRP、CFRTPの材料や生産技術に興味はあるが、どのような材料から手にすればよいか検討しているところ…」という方が多いのではないかと思います。

その場合、お薦めなのが「自社工場の設備で製造できるか?」「自社商品を買ってくれているお客様がそれを必要としているか?」を基準にして、材料を選択されることです。けっして「どうやって作ったかわからないもの」をこれから始めても、きっとモノにはなりません。「ここにヒーターを追加して…」とか「刃物をCFRP用にすれば…」のように、これまでの自社工場でのモノづくりの延長線上で考えられる方法が量産コンポジットのドアを開くと思います。自社や協力工場の設備や人員など、少し俯瞰して見て、自社の強みを生かしたカタチで新しい材料や生産技術を見直してみてください。

今年は、どんな会社がどういうモノを紹介してくるのでしょうか?楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激動の2018年でしたね

日々の業務に追われて、なかなか更新ができていないのに、アクセス数をチェックすると、以前に増してこのブログを読んでいただいているかたが居られることがわかります。コンスタントに更新できず、申し訳ありません。

さて、あっという間に気が付けば年末です。

年初に「2018年はイロイロ動きがありそうな予感」とかコメントしていましたが、今年は、いろいろありましたね。リアルに量産に向けた動きが加速したように思います。

このブログの更新ができないぐらい、ドタバタやっていましたので、弊社が関わっている具体的な話はご紹介できる状況ではないので割愛しますが、日本の製造業の技術開発の実力はやはり素晴らしいと思います。

台湾、中国の方が量産はできているとか、ドイツを中心としたヨーロッパのコンポジット生産技術は凄いとか言いますが、日本の自動車産業で鍛えられたエンジニアが、真剣にCFRPを考えるとこんなコトになるんだ…と、感心するものをいくつか見ました。

量産コンポジットの生産技術は、金属や樹脂で量産をした経験を生かして、それを材料の特性を考慮してモノにすることで、海外では類を見ないコンポジットの量産技術が開発されています。

ただ、それはエンジニアの手作りクラフトマンシップではなく、量産を考慮する場合は必ず工作機械、ロボットのティーチング機能により、繰り返し生産できるものです。それなりの開発コストがかかりますので、中小企業ではなかなか手の届かない世界であることも事実かもしれません。

 

9月に書いたブログで、ヤマハ発動機は4輪参入を断念したことを発表しました。2015年の東京モーターショーに出品されたヤマハが市販を目指していたスポーツカーのプロジェクトは終了し、開発チームは解散したと日経電子版は伝えています。

断念の要因の一つに、ゴードンマーレ―事務所の汎用シャーシiSTREAMを使っていたことがあるとされていました。詳細な事情は当事者でないとわからないし、発表できない事情もあると思いますが、少なくとも日本のモノづくりとは、流儀が違うので、商品にするときに違和感があったのでしょう。

 

 

 

 

プリプレグって何?4年ぶりの続き2

フィルムスタッキングついて、少し追加しましょう。弊社でも取り扱っている、ソフトカーボン(レザー)と呼ばれるのは、このフィルムスタッキングの派生です。「ラミネート」と呼ばれることもあります。ソフトカーボンは、皮革の様な使い方ができるようにコンポジット化させず、繊維は布のまま「動ける」状態です。炭素繊維と熱可塑性の樹脂フィルムを重ねて製造しますが、完全含浸をさせないところがミソです。「リアル・カーボン=本物の炭素繊維」ですが、軽くはありませんし、繊維に樹脂が含浸しているわけではないので「Prepreg」とは言えませんね。ハサミでカットできますし、縫製もできます。本物の炭素繊維を内包しているので、牛革よりも伸びず、型崩れがしにくいので、ヘビーデューティーなカバンや財布の製作には良い素材です。

 

プリプレグから、横道にそれました。熱可塑プリプレグの製造方法はフィルムスタッキングの他には、パウダーコーティング、織物プリプレグ、液体含浸プリプレグがあります。工業的にCFRTPを使用しようとなるとVf(ヴォリューム・ファイバー=繊維含有比)あるいはRC (レジン・コンテント=樹脂含有量)の管理が重要です。炭素繊維に対して何パーセントの樹脂が付いているかです。これが安定しないと成形不良や狙い通りの性能が発現しません。

フィルムスタックでは、同じ面積重量の炭素繊維に対して、何gのフィルムを重ねたかでわかりますね。パウダーコートティングは、熱可塑性樹脂のペレットを粉砕して、パウダー状にして炭素繊維に溶着含浸させたものです。炭素繊維に静電気を発生させ、安定的に樹脂パウダーを吸着させ、加熱溶着処理をすることで、付着を安定させます。イメージとしては、炭素繊維に電着粉体塗装したようなものです。パウダーの粉砕具合にもよりますが、繊維に電気的に引き込まれますので、フィルムよりも深いところまで樹脂パウダーは入り込みます。

織物プリプレグは、以前にもご紹介しましたが、炭素繊維と熱可塑性樹脂の糸を一緒に織ることで、樹脂量を決定します。炭素繊維のヤーンとナイロンなどの糸とを混織するタイプと、糸自体がコミングル・ヤーンと言って糸(ヤーン)のなかで、炭素繊維と熱可塑性樹脂糸を所定の比率で混紡したものを使う場合とあります。

液体含浸は、アクリル(PMMA)やPES、熱可塑性エポキシ樹脂の場合、低分子の液状の樹脂に反応性促進剤と一緒に炭素繊維に浸み込ませ、炭素繊維に絡み合った状態で高分子化させます。すると液体の状態で繊維に浸み込み、加熱により重合が促進し、熱可塑性のシートができます。一度重合できてしまうと、他の熱可塑プリプレグと同じように加熱により動き、冷却すると固まる。という特性をもちます。

 

イロイロ、あるでしょ。それぞれ、良いところも悪いところもあります。

 

 

 

 

 

 

 

プリプレグって何? 4年ぶりの続き。

はてなブログアクセス解析を見ていると、圧倒的に「プリプレグって何?」というページに来られている人が、圧倒的に多く、その4年も前のページを読み直してみると…最後に「次回は、プリプレグの具体的な例をご紹介していきましょう。」としながら、すっかり続きを書くのを忘れ(一時期は、実際にブログの更新も忘れ?)まじめに量産コンポジット、プリプレグ漬けの毎日を過ごしておりました。ブログを見直すと、次は別の話題からスタートしていたことに先ほど気が付きました。

これほど「プリプレグって何?」と思っている人が居られるってことは、ふだんこれまでの人生で「プリプレグ」というモノに出会って来られなかったのでしょう。

 まずは、Pre-Preg(=Pre-Impregnated、前もって含浸された)のことで、カーボンなどの繊維に、前もって樹脂を含浸させた中間素材のことです。炭素繊維業界では、フィラメント(糸)ヤーン(糸の束)UD(糸の束を並べた一方向性材料)ドライファブリック(ヤーンを織った織物で樹脂のついていないもの)ブレイディング(組紐状のチューブ)などの用語があり、それらに樹脂を染みこませたものをプリプレグと呼びます。

このプリプレグ(時々、プレプリグって言っちゃう人います)、以前のブログでは、

大きく分けて熱硬化性と熱可塑性に分かれます。

と書いていますが、実は別の分け方もあります。というのは、熱可塑性のプリプレグは、マトリックス樹脂の供給形態とユーザーの使用したい形態からいろんな種類があります。ユーザー側の層が幅広くなるということは、その素材に対する呼称も変わってきますし、認識にもずれが生じますので、材料屋としては注意深くお客様のご希望を聞く必要があります。

コンポジットパネル(シート)。これは、樹脂が完全にしみこませてあって、熱硬化性の場合は切削加工するしかありませんが、熱可塑性樹脂の場合は、一部、または全部を再加熱することにより形状を変えることができるものです。

フィルムスタッキング。これは、熱可塑性樹脂をフィルム状にしたものを炭素繊維の内外に挟み込み加熱したものです。面的に熱をかけて完全に樹脂が溶けたものや、あまがみ状態でやんわりと半分含浸したもの、樹脂フィルムとカーボン基材をスポット溶接したようなものもあり、これらをセミプレグ(semi-preg)と呼ばれることもあります。なぜセミプレグの様なものが必要かというと、完全に含浸した硬い板状なら成形時に金型に沿わせるために事前に加熱し柔らかくする必要があること。その工程でも時間と加熱装置のエネルギーコストがかかること。最終製品が完全含浸してればよいではないかということです。また、再加熱で柔らかくなる熱可塑性樹脂ではあっても、熱履歴を少なくすることで、樹脂の劣化を少なくしたいという場合など「完全含浸ではない方が良い場合」があるからです。フィルムスタッキング以外にも熱可塑プリプレグは作る方法があって…。

あ、なんかエライ長文になっていますね。読んでいただく方も、そろそろお疲れでしょうから、続きは次回にしましょう。

 

composites.hatenablog.com

 

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